2001年 春に思うこと

ウエイトプル

『ウエイトプル』は国内で犬ぞり大会が開催されるようになった頃からそのプログラムに組み込まれていたにもかかわらず徐々に削減され、今シーズンは本州内では北軽井沢の他にわずか3ケ所でしか楽しむ事ができなくなった。プル界では有名な北海道札幌の大会でも今シーズンはウエイトプルが行われない。

確かにウエイトプルレースは距離が短く、瞬間的に終わってしまうので犬ぞりレースのように見せ場が持続しない。北軽井沢の大会でもタイムレースの最速は 20m のコースを 7 秒弱で通過してしまう。

しかし、犬ぞりよりも手軽にトレーニングができて、しかも犬との信頼関係を深められることからウエイトプルファンは意外に多い。レースのわずかな時間の中には犬と人間とのチームワークや日々のトレーニングで鍛えられた筋肉の躍動があるからだ。そしてプルを教える事によって犬は引く事を覚え、橇を引いて走る犬ぞりに無理なく移行できるという利点もある。そんなウエイトプルを犬ぞりのおまけのように扱われる事に対して少々憤りを感じている人も少なくはないはずだ

ウエイトプルを懸念する理由のひとつとして「引っぱらないように躾けてあるから、、。」という言葉をよく聞く。もう 10 年程前になるが、知人の犬は基礎訓練が入っていて、歩く時は体重 40kg 程の大きな体をオーナーの女性の脇にぴったりと寄り添わせ決して引きずるような事はない。しかしプルの時は見ている者が圧倒される程の力強さで荷を引き難なくゴールしてしまう。つまり引かない事と引く事をしっかりわけて教えられたので、その犬にとってはお手/おかわりで右足を出すか左足を出すかの違い程度でしかない。引かない事を教えられたのなら引く事も教えられるはずだと思うのは私だけだろうか?

現在ウエイトプルで頑張っているチームメンバーに脚側行進を教えている。スマートにスタートラインまで犬と登場し、ガツンと引いてスマートに退場する、来シーズンはこのスタイルで登場したい。

ウエイトプルレースを知らない人は、大きな犬の方が有利だと思ってしまうようだ。しかしクラス別けがされている北軽井沢の大会では、プルレースミドルクラス ( 体重 20 ~ 30kg) で優勝したのは、22kg ~29kg の参加犬の中で 25kg の犬だったし、タイムレースミニクラス ( 体重 10kg 未満 ) の覇者は参加犬の中で一番体重が軽い 5kg の M. シュナウザーだったことから、犬の体重は問題外だと分かる。

そしてもうひとつ、犬に重たいものを引かせるのが可哀想だという間違った親心を示す人がいる。そんな風に思っている人がいたらぜひ一度 ウエイトプルレース を見てほしい。確かに普段から何も運動らしい事をしていないのにいきなり重いものを、しかも嫌がっている犬に引かせる事は虐待になりかねない。もちろんウエイトプルに初挑戦するチームの中には、犬が「???」と何をしていいのか判らずに本来持っているはずの力を使えないままリタイアするものもあるが、多くの訓練された犬達は喜々としてプルを楽しんでいる。他のドッグスポーツと同じように、人間と一緒になって何かをやり遂げる事の楽しさを犬自身が知っているからだ。もっともそれを犬に教えるのは人間なので、逆から言えば犬に楽しさを教えられなければドッグスポーツはできない事になる。

参加者達は日常のトレーニングの中で愛犬の力を十分に理解し、何をするべきかを犬に教え、犬がそれに答えた時は惜しみなく賞賛する。その繰り返しで犬と人間の間に新たな絆が生まれると信じている。

ドッグスポーツの大会 ( レース )は、愛犬との絆やトレーニングの成果を披露する「場」なのだと思う。初心者 ( 初心犬 )でもレースという特別な雰囲気の中に犬を連れて行き、同じドッグスポーツを楽しむ仲間とのふれあいや、経験を積んだチームの観戦をする事は決して無駄ではないはずだ。

ただ犬を「見に行く」だけの見学者なら別だが、これからそのドッグスポーツを愛犬と一緒に楽しみたいのなら、経験を積んだオーナー達がどんなふうに犬と対話しているかをぜひ見てほしい。犬の持っている能力を最大限に引き出すために、どんな工夫をしているのか、犬が犬らしく生きる為に人間はどんな手助けができるのか等とても難しい事のようだが、案外人間側のちょっとした気持ちの切り替えで愛犬をスポーツドッグとして育てる事ができるかもしれない。

ドッグスポーツにも色々なものがある。それらは全て犬が生まれた時から持っている能力のほんの一部を引き出したものにすぎない。しかしそれを引き出すのも育てるのも人間がしなければ、いくら天才的な能力を持っている犬でも一生を庭先に繋がれたままで終わる事になる。

犬は人間にはない素晴らしい能力をたくさん持っている。どんな犬でも例外はないはずだ。お手やおすわりを覚えないからと諦める前に教え方が間違っていないか、どうして覚えないのかなどをゆっくり考えて、愛情を持って教えてあげてほしい。

ドッグスポーツに関しては日本はまだまだ後進国だが、近い将来には複数のドッグスポーツに堪能なスーパードッグが出現するのを心待ちにしている。


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